CAMOUFRAGEカムフラージュ
美樹がこの有名私大を目指し、
いよいよ受験勉強も追い込みの高三の夏。
模試結果が散々で、この大学は無理だ、と教師から宣告され、
美樹はかなり落ち込んでいた。
もう諦めようかとも思っていたその時、
たまたま付けたテレビのグルメ番組で、
大学にある本格派フレンチレストラン、としてこの店が紹介されていたのだ。
おしゃれな学生風のカップルが、多分用意されたモデルだと思うが、
イイ雰囲気で食事をしていた。
インテリアも、フランス料理も、客も、何もかもが、
地方の一高校生だった美樹には、
すばらしく洗練された、憧れの都会の大人な世界に映った。
それを見て、よおおーし、へこんでなんかいられない、
絶対、この大学に入ってカノジョ作って、
このカップルみたいに、このレストランでディナーしてやるからな、
と美樹は固く誓ったのだ。
単純と言えば単純。学徒の志には、かなりはずれた動機である。
しかしまあ、理由はどうであれ、
偶然、テレビ番組で見たこのレストランのおかげで、
一度萎え掛けた闘志を再燃させ、晴れて入学できたのだ。
ディナーは無理でも、取り合えずランチだけでも食べてみよう、
と美樹は、入学当初から決めていたのだが、
地方出の新入生には、なにかと要り用が多く、
三カ月後、今日ようやく願いを叶えたのだ。
バイト代が入ったばかりで気も大きかった。
ランチの中でも二番目に高い、貧乏学生にとっては超贅沢な、
五千五百円のコースランチを、窓から眼下に広がるキャンパスの眺望とともに、
堪能したところだった。
生憎と彼女はまだできていないし、
ヤロウとの高価な昼食にムダに付き合うような、酔狂な男友達もいないので、
当然、独りぼっちの、さみしいランチとなったわけだが。
ま、彼女とツーショットで来るという夢は、今後に乞う期待ということである。
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